![]() | インタビュー:企業立地促進奨励制度(東京都多摩市) |
■ | “企業とマーケットの近さ”が強み。誘致条例改正で多摩市立地に注目 |



地域の経済活性化、雇用拡大、税収確保、ブランディング――さまざまなメリットがある企業誘致の成功に向けて、全国の自治体は地勢や規模、歴史などに応じて、独自の施策を打ち出しています。
東京南西部、多摩丘陵部のほぼ中央に位置し、国内有数の大規模ベッドタウン「多摩ニュータウン」を擁することでも知られる多摩市は、企業誘致を早い段階から始めた自治体のひとつです。ほぼ半世紀前となる1973年には、市内に多摩ニュータウンの住民サービスに不可欠な産業立地をつくる目的で「永山サービスインダストリー地区」を設置。その後、2002年に条例を制定し、今に至るまで企業誘致の施策を継続しています。
本記事では、多摩市役所 市民経済部 経済観光課の担当者にインタビュー。同市の企業立地促進の歴史や最新の制度を紹介します。

SCSK株式会社(2007年)
(画像提供:SCSK株式会社)

(画像提供:京西テクノス株式会社)

(画像提供:JUKI株式会社)

(画像提供:株式会社長谷工コーポレーション)
まずは、多摩市の企業誘致条例の歴史をうかがいました。
「2002年3月に初の企業誘致の条例として『多摩市企業誘致条例』を制定しました。2022年4月には『企業立地促進条例』に改正され、企業の立地対象を多摩ニュータウン地区から市内全域に拡大。中古物件の取得も対象としたほか、中小事業者の要件を緩和しました。基本制度は、事業所の常用雇用者数の下限が20人以上で、奨励金額は固定資産税・都市計画税相当額の80/100。上限は1億円でした(詳しくは記事末の【施策概要】欄を参照)」(麻生氏)
多摩市ではこの企業誘致の取り組みが功を奏して、2005年度から2021年度までに、8社9施設を指定して奨励金を交付。市内に誘致することに成功しています。
「主な要件において、土地面積2,000㎡以上、または土地を除く投下固定資産額3億円以上(中小・小規模企業は1.5億円)と設定していたため、拠点を構えたのはいずれも大手企業です。一方で、一般市民や教育機関向けに日本の国際通信の歴史やマンションづくりの技術や歴史などを見たり触れたりできるミュージアムを併設される企業や、小学生向けのワークショップを開催する企業もあります。このように、企業活動への理解を深めるために事業所ごとの特色を活かした地域に対する取組みを推進する企業もございます。」(武井氏)
多摩市では、将来のまちづくりの根幹となる「多摩市総合計画」を策定。さらに、これを上位計画とした産業振興分野において「多摩市産業振興マスタープラン」を策定しており、このプランに多摩市に誘致された企業も策定委員として参画しています。官民が一体となってまちづくりを行っていることも注目に値します。
「2025年度中には、市内の企業から約30名を募り、多摩市の主催によるDX研修を実施予定。1回当たり2時間、年間69回のeラーニングを行います。さらに年4回、企業の交流会も実施。業種の枠を超えた連携のきっかけをつかむ、情報共有をしていただくなどの機会になればと考えています」(麻生氏)

(画像提供:多摩市)

(画像提供:多摩市)

(画像提供:多摩市)
そして2025年4月1日、企業立地促進制度はさらに一部が改正され、優遇措置を追加しました。
「近年、200室超を含むホテル2施設が閉鎖したことを受け、市民や市内企業から、宿泊施設を誘致すべきとの声が高まっていました。今回の改正はそれに対応する措置です。特徴は常用雇用者数の下限を5人として、小規模施設も対象としていること。また、建物の容積率50%未満の宿泊施設以外、例えば商業施設や集合住宅などとの併用も可能です(詳しくは記事末の【施策概要】欄を参照)。市内には多摩センター駅近くの鶴牧倉庫(旧・都市廃棄物管路収集センター)、再開発が検討されている南多摩尾根幹線沿いなど、ポテンシャルの高い土地がありますので、ぜひ検討いただければと思います」(麻生氏)
宿泊施設を求める声の内容を聞いてみました。
「市民からは『以前、市内にホテルがあった時は、親類が訪ねてきた際に泊まってもらう場所として使っていたため、なくなってしまうと親類を招きづらくなる。新たな宿泊施設、ホテルをつくってもらえないか」といった声が多数寄せられました。また、市内企業や議会からは、市民の声と同様の要望に加えて、ビジネスで来街された方や国内外の観光客誘致のために宿泊施設が必要とのご意見が多数あがっていました。多摩市には『サンリオピューロランド』をはじめ、複合文化施設『パルテノン多摩』、パルテノン多摩に隣接し、2025年4月に大規模リニューアルを終えたばかりの『多摩中央公園』、万葉集に“多摩の横山”として詠まれた歴史的な古道『多摩よこやまの道』など、多くの魅力的な観光スポットがあります。市としては東京観光の一環としてこれらの施設を訪れていただくとともに、宿泊していただいてゆっくりお過ごしいただければと考えております」(麻生氏)

(画像提供:多摩センター地区連絡協議会)

(画像提供:多摩センター地区連絡協議会)

(画像提供:多摩センター地区連絡協議会)

(画像提供:多摩センター地区連絡協議会)
最後に、多摩市に企業が拠点を置くことで得られるメリットをうかがいました。
「まずは交通利便性の良さですね。新宿から直通電車で約30分の多摩センター駅には、京王線・小田急線・多摩都市モノレールが乗り入れています。車での移動も便利で、中央自動車道の稲城、国立府中の両インターへのアクセスに優れています」(満井氏)
近年、国内で自然災害が頻発しており、そこに立地していた企業も大きな被害に遭っていますが、その点において多摩市には強みがあるそう。
「市内のニュータウン地域は多摩丘陵のほぼ中央にあり、海岸や大きな河川から離れています。そのため、津波や洪水被害、液状化の心配がほとんどないのです。ちなみに東京都による『地震に関する地域危険度測定調査』では、多摩市内のほぼ全域が、各種危険度判定で5段階評価のうち、最も危険性が低いとされる“ランク1”に区分されています。そのため、大手通信企業のバックオフィスも拠点を構えています」(麻生氏)
「市内の企業の多くが地元の協議会等に加盟しており、地域のイベントに積極的に参加していただいています。そのため、市民と触れ合ったり、カスタマー目線からご意見をいただいたりできる機会に恵まれているのです。例えば『多摩センター地区連絡協議会』は、多摩センター駅に直結しているパルテノン大通りで定期的に開催されるマルシェなどの活性化イベントを主催しており、協議会会員企業等の中にはブース等を出して、ワークショップなどを行い地域との接点多くもつことで地域の声をCSR活動や事業所の運営に活かしているようです。今後、多摩市に拠点を構えられた企業様はぜひ地元の協議会に加盟いただき、マーケットとの距離感の近さを企業活動に活かしていただければと思います」(武井氏)
さらに、従業員にとっても多摩市は魅力的な環境に。職住近接の利便性に加えて、居住満足度も高いはずとのこと。
「保育園、幼稚園、学童クラブ、小中高から大学と教育施設が豊富にそろっています。また、大規模ショッピングモールや大型量販店など買い物の選択肢が豊富ですし、自然豊かな公園、緑地も点在しているため、生活利便性、子育ての面でも申し分のない環境であると自負しています。ぜひ多摩市の企業立地促進制度をきっかけにしていただき、当市での事業展開をご検討ください」(麻生氏)
公開日:2025年(令和7年)5月7日
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施策名称: 企業立地促進条例 -
部署: 多摩市市民経済部
経済観光課商工観光担当 -
住所: 〒206-8666
東京都多摩市関戸六丁目12番地1
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電話番号: 042-338-6909 -
ホームページ: https://www.city.tama.lg.jp/
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