![]() | インタビュー:innoba(イノーバ)大田(東京都大田区) |
■ | ものづくり・研究開発に適した設計も話題のシェア型産業創出・支援施設 |

innobaは「innovation(イノベーション」」と「場所」を表す「ba」を組み合わせた造語
3,500以上の町工場が集積する東京都大田区(令和3年経済センサス-活動調査)は、都内はもちろん全国的にも「ものづくりのまち」として知られています。同区は、他の自治体に先駆けて20年以上前から創業支援施設を設置し、多くのスタートアップやベンチャー、既存企業の共創の場の提供やサポートを続けてきました。
そんな大田区に2023年8月、「innoba(イノーバ)大田」が開業しました。大田区は区内の「工場アパート」建設を支援する「大田区工場アパート立地助成事業」を行っており、innoba大田はこの制度を活用して建てられた、初の民設民営のシェア型産業創出・支援施設です。運営事業者である三菱商事都市開発株式会社の担当者に、同施設の特徴や強み、大田区立地のメリットなどを伺いました。


まずは施設の特徴からお聞きしました。
「中小規模でものづくり、研究開発などを行う企業にとって、スペースや床荷重、電気容量などハードの規模感が“ちょうど良い”ことが挙げられると思います。現在入居している企業からは『業務内容に見合った床荷重や電気容量を備える施設を探したところ、1,000坪=3,300㎡超など広過ぎる物件が多かったのですが、その点、innoba大田は適切なスペースでありながら、必要な床荷重、電気容量を備えていて理想的でした』といった声を多くいただきました」(三菱商事都市開発 開発推進第一部 髙橋絵美氏)
地上6階建てのinnoba大田の工場・業務スペースは1~5階。床荷重は、1階1.5t/m2、2・3階1.0t/m2、4・5階0.8t/m2、電気容量(動力)は、1階最大約850VA/m2、2・3階約600VA/㎡、4・5階約300VA/m2となっています。
専有部の区画数は32。各面積は約60~230m2で、隣接区間の間仕切りを撤去してつないで使うなどフレキシブルな利用が可能です。天高は、1階梁下最大3.0m、2~5階梁下最大2.9m、開口は1階最大3.0×2.5m、2~5階1.8×2.1mとなっており、ゆとりあるスペースです。さらに、全区画の給排水系統設置や、換気用ダクトの取り回しがしやすい設計で、レイアウトの自由度が高いことも高評価を得ているとのこと。
「1~3階までは工場・研究開発のラボとしても使用可能。用途や希望に応じて工場・研究開発と業務スペースのフロアを分けて借りていただくこともできます」(髙橋氏)
また、共用の荷捌きスペース、エレベーターも充実しています。
「1階に大きな搬入口がある荷捌きスペースがあり、入居企業から『大きな精密機器搬入の際に役立った』との声もいただいております」(同 運営統括部 川口晃祐氏)
設置されている搬入エレベーターの積載荷重は約2tで、廊下幅は1階約3.9m、2~5階約1.8mと、こちらも十分な広さを確保しています。


共用スペースといえば、もうひとつの特徴が最上階6階に設けられている「innobaホール」とのこと。
「ここでは2~3ヵ月に一度のペースで入居企業同士、時には近隣のインキュベーション施設の入居企業も招いて“交流会”を開いています。innoba大田の目的のひとつに、『ものづくり・研究開発企業や、スタートアップ企業がひとつの場所に集まることで起きる化学反応やリレーションシップの創出』があり、交流会はまさにこの目的を実現するための機会創出の場にしたいと考えています。また、外部の協力を得て補助金・支援金制度の説明会、産学連携等のセミナーを開催したほか、毎年11月に行われる大田区のものづくりの祭典『おおたオープンファクトリー』にもinnoba大田として参加しております」(同 相良直哉氏)
さらに3・4階に設けられた共用の会議室は、入居企業が打ち合わせやプレゼンなどに利用できるそうです。
「こうしたパブリックな用途の場所を入居企業にてシェアいただくことで、各企業は専有部をものづくり、研究開発など、本来の業務にのみ使用することが出来るうえ、会議室等の造作が不要となるため、入居企業にとってコストの削減にも繋がると考えております。innoba大田では入居企業への支援を目的にコミュニケーションマネージャーを配置し、イベントの開催による機会創出の場の提供や、入居企業のお困りごとの解決に携わっております。また、大田区とも毎月定例会を開催し、innoba大田の状況や入居企業に関する情報交換を行っております」(相良氏)

最後に、大田区立地のメリットを伺いました。
「最大の魅力は羽田空港へのアクセスの良さでしょう。徒歩約6分の京浜急行六郷土手駅から、あるいは車でも20分程度で到着できます。国内外からクライアントを招いて自社のプロダクトを訴求する、あるいは入居企業が国内外へ出張する、いずれの場合も得難い利便性です。また、国内で動くことを考えてももちろん好立地です。品川駅は六郷土手駅から京浜急行により最速10分あまりで到着でき、そこから新幹線や山手線などへ快適に乗り換えられます。こうしたアクセスの良さは、ビジネスチャンスの拡大に寄与すると思います」(相良氏)
さらにinnoba大田の立地は、第一京浜、環状八号線、首都高速道路の羽田ICも近く、車での移動も便利です。こうした電車や車などを含めた交通アクセスの良さは、ビジネスだけでなく従業員の通勤利便性にも影響を与えます。近隣には住宅地が広がり、老舗の商店街、公園や緑地も多く、従業員の方のワークライフバランスの向上にも寄与します。
加えて、産業振興に積極的な大田区の各種支援を受けやすいこともアドバンテージでしょう。各種補助金や助成金の選択肢、経営相談やイベント参加の機会、地元の多様な製造業者との交流のチャンスなど、いずれも都内でトップクラスの充実度です。
「私たちは現在、戦略的に新たなシェア型製造・研究開発施設を展開していく計画を立てており、直近では首都圏で2番目のinnoba開業に向けて準備を進めています。都内でも屈指のものづくり拠点にあるinnoba大田で得たノウハウや入居企業からの声は有益であり、今後の開発に大いに活かせると考えております」(開発推進第一部 新森一生氏)
公開日:2025年(令和7年)3月4日
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施設名: innoba(イノーバ)大田 -
所在地: 東京都大田区仲六郷4-32-6 -
運営: 三菱商事都市開発株式会社
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設立: 2023年(令和5年)8月31日 -
事業内容: 製造・研究開発企業等の事業拠点、サポート業務 -
ホームページ: https://innoba.jp/