インタビュー:イデタチ東京(東京都荒川区) |
■ | 日暮里繊維街から世界へ! ファッションビジネス特化の起業支援施設 イデタチ東京 |
日本有数の繊維関連業の集積地、荒川区の日暮里繊維街。現在、約90店舗が軒を連ね、ファッションデザイン、手芸、ものづくりなどに取り組むデザイナーやアパレルメーカー、作家、学生から一般の買い物客まで多くの人が材料を探しに訪れます。
「イデタチ東京」はその日暮里繊維街に立つ、ファッション関連産業で起業したい方をサポートする支援施設です。特徴や支援内容を取材しました。
統括マネージャー/コーディネータ 児玉あゆこ氏
イデタチ東京が入居している「ふらっとにっぽり」が完成したのは2021年1月。イデタチ東京はその翌月、2月1日にオープンしました。施設は、22㎡の個室オフィス4室、各デスクがパーテーションで区切られたシェアオフィス5席、打ち合わせコーナー、宅配ロッカー、メールボックス、複合コピー機などの共有設備で構成されています。さらに、イデタチ東京の入居者は、株式会社ベビーロックが運営するプロ向け機材をそろえたシェア工房「ベビーロック・スタジオ日暮里」を特別割引で利用することもできます。
運営事務局 統括マネージャー/コーディネータの児玉あゆこさんは、イデタチ東京の特徴を次のように話します。
「当施設の強みは、ファッションに関連した豊富な経験、知識を持つ専門家の支援体制が充実していることです。具体的には、ファッション・コンテンツ業界で多くの起業支援を行ってきたインキュベーションマネジャー2名のアドバイス、ファッションに関連する法律問題に詳しい弁護士、『ファッション・ロー』やECコマースなどの専門家7名のメンタリングを受けることができます。インキュベーションマネジャーの面談は月2回。他の都内の起業支援施設でもこうした仕組みはありますが、当施設の月2回というのは、かなり頻度が高いと思います。伴走的に定点観測し、事業の進捗を逐一報告してもらうことで、ファッションビジネスとしての基盤をスピーディーに築くことができます」
現在入居しているのは、2021年のオープン時に第1期生として入って来られた7事業者。最長3年間ここで仕事をすることができます。世代は20代から50代後半までで、中心は20代後半~30代前半。6対4ぐらいで女性の方が多いそう。
「皆さんの領域は、アパレル、テキスタイル、アクセサリーなど。クリエイターとしての技術はお持ちですし、創りたいモノや方向性も明確です。ただし、ビジネスとして継続させ、軌道に乗せるために必要な資金調達、あるいは知的財産権の管理、別のクリエイターさんとコラボする際の適切な契約書の作成などの経験が不足しているので、その部分を重点的にサポートしています」(児玉氏)
ほかにも、年4回ほど開催する、先輩起業家の貴重な体験談が聞けるトークイベント、ファッションビジネスのトレンドを知ることができるセミナーなども好評だそうです。
荒川区 産業経済部 経営支援課長 石﨑正剛さんは、イデタチ東京がある日暮里繊維街の環境も、この施設ならではの魅力と言います。
「かつて繊維卸問屋街は日本の各地に存在していましたが、現在、プロ~一般客も訪れて買い物ができる場所はここくらいしか残っていません。繊維資材を中心に皮革、ボタン、型紙、縫製、アクセサリーなどのさまざまな専門店がそろっており、コロナ禍前は海外からも多くの人が訪れていました。すぐそばに材料を比較検討、入手できる場所があるのはイデタチ東京独自の長所だと思います」
イデタチ東京では、施設を卒業した事業者には、その後もできるだけ荒川区内でビジネスを継続してほしいと要請しているとのこと。
「ファッションビジネスの拠点は港区、渋谷区が中心という印象ですが、スタートアップ企業にとって荒川区は家賃が安く、ランニングコストをセーブできる点が魅力です。しかも“住居用ではなく事務所利用できる物件”を借りていただければ、毎月5万円×3年間、荒川区が賃料補助を継続します。また、荒川区と協働で空き家再生事業を行っている東京R不動産さんが、入居者向けのワークショップを開催予定。アトリエを構える際のノウハウや荒川区内の先輩クリエイターのアトリエ紹介などをしていただきます」(石﨑氏)
足まわりの良さも特徴です。日暮里は山手線駅で都心の主要駅に直通の上、京成本線で成田空港へは約40分。
「近い将来、世界を視野に入れて仕事に取り組んでいる人も多く、その点、成田へのアクセスが良いことは大きなアドバンテージだと思います。イデタチ東京から世界に羽ばたく人たちが出てくれたらうれしいですね」(石﨑氏)
布(反物)をモチーフにした外観デザイン
東京はファッション、文化など日本の最先端の流行集積地です。それだけに、ファッションビジネスを起業し、継続を目指す方にとって、やはり東京に拠点を構えることは有利に働きそうです。
「情報の集積はもちろんですが、同業者が多いことも長所だと思います。一人で集中して取り組むのももちろん良いのですが、複数の人が集まって、おしゃべりしたりしながら進めると、自分が見逃していた視点やアイデアがつかめるのではないでしょうか。そういう意味で、同じ施設内で同じ志をもっている人が集まっているイデタチ東京の存在意義は大きいと思います。事実、入居者同士のコラボ事業も生まれているんですよ」(児玉氏)
「創業を支援する各種制度が充実しているのも東京の利点です。荒川区はもちろん、東京都の各種融資制度や創業助成金が受けやすいですし、ビジネスコンテストなど自分の作品を発信しやすい環境も整っています。今後、都内で重厚長大産業を立ち上げるのは難しいと思いますが、ファッション領域は、当初はスモールビジネスとして立ち上げられる業種です。我々は、小規模から始めたファッションビジネスを大きくするお手伝いをしていきたいと考えています」(石﨑氏)
取材日:2022年(令和4年)9月1日(取材時は、説明者は説明時のみマスクを外し、取材スタッフはマスク着用しております。)
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施設名: イデタチ東京 -
住所: 東京都荒川区
東日暮里六丁目17番6号 -
運営: 荒川区、イデタチ東京運営事務局
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設立: 2021年(令和3年) -
支援内容: ファッション領域で創業、事業拡大を目指す事業者のための創業支援施設 -
ホームページ: https://idetachi.com/