■東京都企業立地セミナー2018“成長する意思”を叶える立地イノベーション
東京都は平成30年2月9日、港区の建築会館ホールで企業立地セミナー2018「“成長する意志”を叶える立地イノベーション」を開催しました。東京都立川市のセンサーメーカー社長ら二人の講師が、事業環境が大きく変わる中での中小企業経営の成功例を紹介し、企業関係者や行政機関関係者など多くの方が講師の話に耳を傾けました。
<東京都産業労働局・坂本雅彦商工部長>
冒頭、坂本雅彦東京都産業労働局商工部長が「東京の区内は住工混在、多摩地区は大手企業の転出といった状況にどう対応するかが課題となっている。そんな中、都は企業立地を改めてサポートしようと考え、昨年12月、日本橋に企業立地相談センター(注1)を開設した。このセミナーはセンター開設記念セミナーの形づけとなっており、お二人の講演から知識、情報を得て、大きな飛躍の機会にしていただきたい」と主催者を代表し挨拶しました。
(注1)「東京都企業立地相談センター」ホームページ https://ilsc.tokyo/index.html
<日本政策金融公庫・黒田篤郎専務>
基調講演は黒田篤郎日本政策金融公庫代表取締役専務取締役・中小企業事業本部長が「事業環境の変化に立ち向かう中小企業~革新的な取組みを行う中小企業等の事例から~」のテーマでお話されました。黒田講師は「電子立国と言われた日本だが、今は“自動車一本足打法”になった」と、様変わりした産業構造について、データを挙げて説明。
その上で、環境の変化を乗り越え、好業績を収めている全国中小企業の数々を紹介されました。製釘から品種転換し、異形線のトップメーカーに育ったA社(大阪府)、大手電機メーカー1社依存の下請け体質から脱皮した精密溶接加工のB社(大阪府)、コア技術の精密研削加工を生かし、コンサルティングなどサービス化を推進するC社(東京都)、計測器などの修理・メンテナンスを、機器メーカーを問わずに引き受けるトータルマルチベンダーサービス会社のD社(東京都)、100円ショップへの納入実績に基づき「売れるものづくり」を指南するE社(奈良県)について、それぞれの特徴を解説いただきました。
黒田講師は、各事例紹介を踏まえて「原点回帰と意識改革、それに若社長の強い危機感から生まれるリーダーシップの三つが共通項目。加えて、ニッチ分野に絞り込む、組み合わせ・バリエーションを持つ、サービス・ソリューションを提供する、ネットを活用し販促効果を高める、IoT(モノのインターネット)に対応する-といった五つの取り組みも成功への鍵になっている」と話をおまとめになりました。
<メトロール・松橋卓司社長>
続いて、工業用センサーの専門メーカー、メトロール(東京都立川市)の松橋卓司社長が「40年間、世界一地代が高くてもMade in TOKYOにこだわり事業をやるメリット」の演題で特別講演を行いました。
松橋社長は、多摩地区は工業集積地。その一角の立川市には三つの工業団地があり、中央線で新宿まで35分など“地の利”を説き、同社が精密位置決めセンサーで世界トップシェアを獲得するまでの経緯を振り返りました。
その上で、「現在、世界72カ国の企業と取引をしているが、製品はすべて東京の立川市で生産している。コスト高と思われる東京だが、インターネットを活用することで海外のユーザーに低価格で販売できる。国際物流や電子マネーが発達した今、アナログの海外支店は不要と判断し、支店をクローズした」と、デジタル・ネット環境の進化への対応を説明されました。
年間20回以上、海外出張をするという松橋社長は「羽田と成田の二つの空港を持つのが東京の強みの一つ」と国際ビジネスマンならではの感想も。また、リクルートに関しては「多摩地区には多くの大学があり新卒の応募倍率は高い。一方で、大手企業の工場閉鎖により、普段では採用できない技術者の応募も増えている」と、人手不足のなか人材の好循環を実感している様子。最後に「今回、何を話そうかと、考えをまとめ整理する中で、東京のメリットを再認識した」と、国際都市・東京の魅力に言及し講演を締めくりました。
当日は、事業者の方を中心に多くの皆様にご参加いただき、東京都の企業立地施策について広くご紹介いたしました。