食品関連製造搬送機械、マテハンの搬送機械、プラント、コンベヤなどの設計・製造・販売を手掛ける三鈴工機株式会社は、2026年で創業80年を迎える老舗メーカーです。三重県四日市市に本社、製造拠点を構える一方、早くから東京、大阪に営業拠点を設置。全国の顧客を対象に販売、機械メンテナンスなどを行ってきました。
東京進出は1960年頃。神田を皮切りに、事業拡大に伴って新橋、浜松町へ移転。そして2020年9月、「MFIP(三井不動産インダストリアルパーク羽田)大田区産業施設」に拠点を移し、今に至っています。取締役FFA事業部長 兼 東京事業所長 岩元正裕氏に、同社の事業内容や展望、MFIPの魅力などをインタビューしました。
取締役FFA事業部長 兼 東京事業所長
岩元正裕氏 「FFA」は「フード・フレキシブル・オートメーション」の意で、食品加工プラントの自動化、省人化を実現する部署
「創業時は、土砂や工場、物流施設などで使われる搬送用ローラコンベヤなど、モノの移動を効率化する“マテハン(マテリアル・ハンドリング)”関連装置を手掛け、1960年代半ばからは食品加工機械の製造販売に業務を拡大しました。1970年代前半には、米国Baker Perkins社と製パン機械の製造に関する技術提携を行い、製パン量産機の大半が輸入されていた時代に、大型製パン機械や食品加工プラントの国産化を実現しました。以来、日本を代表する製パン・製菓メーカーの多くに採用され、現在に至っています」
さらに1998年には、イギリスの世界的菓子機械メーカー・APV Baker UK社(現:Baker Perkins社)とビスケットなどの生産機械装置の技術・販売提携も実現。以降、日本国内大手の菓子メーカーに、同社製機械を販売しています。2019年には、1998年の技術・販売提携時に設立した三鈴BP株式会社を合併。マテハンと食品部門の2本柱に加え、イギリス製機械の輸入販売も三鈴工機の重要な事業となりました。
「マテハン、食品問わず納入したすべての機械に、万が一何らかのトラブルが発生した後の対応の迅速さは、大きな強みであると自負をしております。ここ数年の売上は国内が大半なのですが、2025年夏に台湾向けの製パン機器の設置工事を予定していることもあり、今後、海外比率は15~20%程度に増えていくことを見込んでいます」
三鈴工機がMFIPに東京事業所を開設した理由を伺いました。
「2019年に三鈴BPを合併したこと、さらに2021年に創業75周年を迎え、その先の“100年企業”を目指すにあたり、営業拠点以外の機能も併設できる場所を検討することになりました。そこで、営業拠点に加えて、製品のデモを実際に見て試せる常設展示スペース兼テストラボとして『イノベーション・ラボ』、個人農家や災害現場など多目的に対応する独自設計のグラビティコンベヤの販売・サービス拠点となる『GC・デポ』も合わせ、3つの機能を擁する施設として十分な広さを持つMFIPを選んだのです」
加えて、MFIP選定にあたり、同社会長の目には、災害やBCP(事業継続計画)対応の手厚さも魅力的に映ったとのこと。
「例えば地震の揺れを直接建物に伝えづらくする免震構造の採用、非常用発電装置、備蓄倉庫、防潮堤設置レベルを上回るように地盤面をかさ上げしていることなどが決め手になったと聞いております。また、当社は首都圏の顧客も多く、羽田に拠点を持つことで迅速な対応が可能になりましたし、三重県の本社をはじめ、地方から東京事業所を訪れる社員や関連業者にとっても、アクセスの良さは大きな魅力です。2025年3月には、東京モノレール整備場駅とMFIPを徒歩3分で結ぶ青宙橋(あおぞらばし)が開通したことで交通利便性がさらに向上。もともと近かった羽田空港への接続がより一層スムーズになり、東日本や、中国、香港、台湾、韓国、インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシアなど海外顧客のもとへも行きやすくなりました。来月にはイノベーション・ラボで新しいコンベヤの見学会を開催予定。多くの顧客が来場することになっています」
さらに、MFIPの外観デザインの視認性や存在感の高さが、三鈴工機東京事業所のステータス向上に寄与していると感じています、と岩元氏。ここに移転後、中途入社した4~5人の若手社員の志望動機には、MFIPのデザイン性や、開放的で洗練された職場環境も含まれていたそうです。
岩元氏は、ものづくり企業の集積地である大田区に事業所が立地していることも大きなメリットだと話します。
岩元氏は、「大田区の紹介で区内のものづくり企業に依頼して、コンベヤベルトの汚れを拭き取る清掃装置・ワイパーローラーを開発していただき、導入しました。洗浄のコスト低減、衛生管理も向上し、顧客からも高評価をいただきました。今後も、地元のものづくり企業との連携で、既存機械の改善や新技術の導入を模索したいと思っています」
MFIPへの入居を検討している企業に対しても、大田区の産業支援に着目しては、とアドバイスをしてくれました。
「大田区の企業バックアップは、そのスケールや助成、補助の内容、スピード感などが他地域と比べて非常に優れており、頼りになります。また、頻繁に行われる展示会や研修・講習会などを通じて、さまざまな業界の情報やネットワークを得られることも魅力です。MFIPの環境の良さと合わせて、大田区の産業支援も勘案してはいかがでしょうか」