
ウェットラボとは物理・化学の実験を行う研究施設です。
メリットは、自社で構築する場合にかかる初期コストを大幅に削減し、契約後すぐに研究を開始できることです。
ドライラボとの違いやレンタルラボ活用のメリット・注意点、選び方を解説します。
本記事は、東京都内で新たに研究施設(ウェットラボ)の取得を検討している事業者を対象としています。
研究開発体制の強化を検討するなかで「ウェットラボを導入すべきか」「自社で構築するのとレンタルでは何が違うのか」と悩む方は少なくありません。
とくに中小企業やスタートアップにとって、初期投資の負担やスピード感は重要な判断材料となります。
本記事では、ウェットラボの基本的な意味からドライラボとの違い、レンタルラボ活用のメリット・デメリット、そして選ぶ際のポイントまでを解説します。
研究開発拠点の立地や設備に関する判断材料として、ぜひお役立てください。
1.ウェットラボとは?

ウェットラボとは、特定の装置や薬品を用いて物理・化学の実験を行うための研究施設を指します。
「ウェット」という名称は、水や液体を使う実験室という意味に由来しています。
ウェットラボでは、生化学実験や細胞培養実験、遺伝子実験など、実際に装置や薬品を使用する研究が行われます。
そのため、施設には安全キャビネットや専用冷蔵庫、冷凍庫といった専門機器のほか、給排水設備や排気ダクト、ガス設備などが備わっていることが求められます。研究内容によっては、BSL(病原体を取り扱う施設の封じ込めレベルを示す指標)の確保も必要となり、たとえば、インフルエンザウイルスの研究を行う場合には、少なくともBSL2以上 の水準が求められます。
出典:厚生労働省「感染症法に基づくBSL4施設の基準」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001750229.pdf
ウェットラボとドライラボの違い
ウェットラボと比較されることが多いのが「ドライラボ」です。どちらも実験・分析を行うラボですが、その内容は大きく異なります。
| 項目 | ウェットラボ | ドライラボ |
| 主な用途 | 薬品・細胞・試料を実際に操作する実験作業が中心 | データ解析・モデリングなどの計算作業が中心 |
| 実験例 | 生化学実験、細胞培養、遺伝子実験、医療機器メンテナンス | ゲノム解析、量子状態分析、シミュレーション |
| 必要設備 | 安全キャビネット、専用冷蔵庫・冷凍庫、バイオセーフティキャビネット(BSC)などの耐性設備 | 高性能PC、セキュアなネットワーク、湿度管理された空調 |
ウェットラボでは、物理・化学の実験に際して装置や薬品を実際に使用します。具体的には、生化学実験や細胞培養実験、遺伝子実験、試薬を用いた評価試験などが行われます。主要な機器としては、安全キャビネットや専用冷蔵庫、冷凍庫などが挙げられ、バクテリアや化学物質への耐性を備えた設備が必要です。
一方、ドライラボでは、コンピューターを用いた模擬的なシミュレーションや解析が中心となります。
現代のバイオ領域では、ウェットとドライの両方の知識を持つ研究者の需要が高まっており、両者を統合した研究が行われるケースも増えてきています。その背景として、ウェットの結果をドライで解析し、ドライで得られた成果をウェットで活用するなど、両者の知識は研究を効率よく進めるために不可欠です。
自社の研究内容がどちらの施設を必要とするのか、あるいは両方が必要なのかを見極めることが大切です。
2.ウェットラボの種類と課題

ウェットラボの利用形態には、大きく「自社ラボ」「大学ラボ」「レンタルラボ」の3種類があります。それぞれに特徴があり、企業の規模や研究目的、予算によって最適な選択肢は異なります。
①ウェットラボの種類
大学ラボは、大学内のシーズを活用しながら研究を進める形態です。アカデミアとの連携による知見の獲得が期待できますが、 大学側との共同研究契約や研究成果の権利関係について調整が必要となる場合があります。
レンタルラボは、賃貸オフィスのように実験・研究スペースを借りる形態です。スタートアップや中小企業を中心に利用が増えており、初期コストを抑えながら研究開発を開始できる選択肢として利用されています。
②自社ラボ・大学ラボの課題
自社ラボの最大の課題は、初期コストと時間がかかることです。ラボの建設には数千万円規模の投資が必要となることも珍しくありません。また、郊外に立地することが多いため、研究者が孤立しやすく、外部との交流が生まれにくいという側面もあります。
大学ラボについては、研究成果の権利問題が課題として挙げられます。共同研究の成果物に関する取り決めが複雑になることがあり、事業化を見据えた場合には慎重な検討が必要です。
また、大学側の意向やスケジュールに合わせる必要があるため、スピード感を持った研究開発が難しいケースもあります。
こうした課題から、とくに資金に限りのある中小企業やスタートアップにとっては、初期投資を抑えながらすぐに研究を開始できる「レンタルラボ」という選択肢を検討する企業も増えてきています。
また、実験台やヒュームフードなどの基本的な研究設備をあらかじめ備え付けているレンタルラボも存在し、イニシャルコストを大幅に削減できるケースもあります。
3.ウェットラボをレンタルするメリット

レンタルラボを活用することで、さまざまなメリットを得ることができます。
- 初期コストを大幅に削減できる
- 契約後すぐに実験を始められる
- 都心アクセスがよく、通勤しやすい立地が多い
- 共用機器の無料利用や入居企業同士の交流が可能
- 事業化支援プログラムを提供している施設もある
自社ラボ建設には数千万円規模の設備投資が必要になる場合がありますが、レンタルラボなら賃料と最低限の設備費で研究を開始できる可能性があります。
給排水・空調・電気設備などが整った状態で利用できるため、入居後すぐに研究活動に着手できる可能性があります。
都市部を中心に立地しているケースが多く、交通アクセスがよい施設もあります。
一部施設では共用機器が無料で使用できるほか、入居者間の交流を促進する仕組みが用意されている施設もあります。
研究開発に加えて、事業成長や事業化に向けたサポートを受けられるケースもあります。
4.ウェットラボを借りる際のデメリット・注意点

レンタルラボには多くのメリットがある一方で、利用にあたっては注意すべき点もあります。レンタルラボの形態には、個室を借りる「一室借りタイプ」と、実験台や機器を他社と共有する「シェアラボタイプ」があります。
- 機器の利用時間に制限があることがある
- 他社と空間を共有するため、実験内容が見られる可能性があり機密性が低い
- 高度な研究や秘匿性の高い研究には不向き
- シェアラボより賃料が高い傾向
- 室内に導入する機器の搬入費・メンテナンス代が入居者負担になる場合が多い
- 想定以上にランニングコストが発生することがある
- 大型機器を導入する場合、エレベーターのサイズや床荷重への対応を事前に確認する必要がある
【シェアラボ】
【一室借りタイプ】
5.レンタルウェットラボを選ぶ際のポイント

レンタルラボを選ぶにあたっては、まず研究に必要な機器と設備のスペックを明確にし、どのような研究をどの程度の規模・期間で行うのかを具体的に想定することが重要です。そのうえで、以下のポイントを押さえながら検討を進めましょう。
①広さと設備
最初に確認すべきは、広さと設備のスペックです。 とくに「天井高」「電気容量」「床荷重」「空調・吸排気設備」「給排水設備」「BSL」については必ず確認してください。
研究に使用する機器には、大型で重く電気消費が激しいものもあります。天井高や床荷重が不足していると、そもそも機器の搬入ができないというリスクがあります。
また、空調・吸排気設備や給排水設備が不十分だと、研究廃棄物の処理で近隣トラブルに発展する可能性もあります。
BSLについては、研究内容によっては実験そのものができなくなるリスクがあるため、必ず確認しましょう。施設を契約する前に、具体的な研究内容を相談し、希望の条件を満たすかどうかを確かめることをおすすめします。
➁利用条件
入居に際しての契約条件も重要な確認事項です。大学が運営しているラボの場合、大学との共同研究や大学発ベンチャーのみが入居できるケースがあります。
また、行政が運営するラボでは入居可能な期間が定められていることが多く、短い場合は2年程度でほかの施設への移転を検討しなければなりません。民間運営のラボでも、研究ジャンルを特定している施設があり、入居時に研究内容の審査が必要な場合もあります。
ベンチャー企業やスタートアップにとって、研究内容の審査の有無や利用期間の制限は事業計画に直結する問題です。契約前に詳細を確認し、自社の研究計画に支障がないかを検討しましょう。
③サポート体制
レンタルラボのなかには、中小企業支援やベンチャー支援に積極的に取り組んでいる施設もあります。
たとえば、公的機関が運営するインキュベーションラボでは、多くの場合、インキュベーションマネージャーが常駐しており、研究開発の助言や資金調達、販路開拓の相談に応じてくれます。
ラボを借りるだけでなく、事業化に向けた支援が得られることは、とくに資金繰りに余裕のないスタートアップにとって大きなメリットとなります。各ラボのサポート体制を比較検討し、自社の成長フェーズに合った施設を選ぶことで、研究成果や事業成長によい影響を与えることができます。
④周辺環境
ラボがどのような立地にあるかも見逃しがちですが、重要なポイントです。
市街地でアクセスのよい立地であれば、通勤の利便性が高く、人材採用においても有利に働きます。一方で、周辺に住居や商業施設がある場合、研究内容によっては近隣への配慮が必要となることがあります。
市街地から離れた場所にあるラボは、通勤や食事の面で不便さがある反面、研究に集中できる環境が整っていることが多いです。研究内容や従業員の通勤事情、将来的な人材確保なども考慮しながら、バランスの取れた周辺環境を選択することが大切です。
まとめ

ウェットラボは、物理・化学の実験を行うための研究施設であり、研究開発体制の強化を目指す企業にとって重要なインフラです。
自社でラボを構築する場合には多額の初期投資と時間が必要となりますが、レンタルラボを活用することで、コストを抑えながらスピーディに研究を開始することができます。
また、ラボそのものの設備だけでなく、立地環境も重要な要素となります。通勤のしやすさ、人材確保のしやすさ、周辺環境との相性など、研究内容や事業方針に応じた最適な場所を選ぶことが求められることが想定されます。
東京都内で研究開発拠点の立地をお考えの方は、東京都企業立地相談センターにご相談ください。同センターでは、オフィスや工場、倉庫、事業用地など、企業立地に関する総合的な相談を受け付けています。
希望条件に合った物件情報の一斉照会や、立地支援制度・産業振興施策の情報提供、専門アドバイザーによる相談など、事業用物件探しを幅広くサポートしています。研究開発に最適な環境づくりに向けて、ぜひご相談ください。
※本記事は、事業用物件を検討する際の参考として、一般的な情報をまとめたものです。内容は法令・制度・物件条件等により適用が異なる場合があり、特定の結果や契約の成立を保証するものではありません。あらかじめご了承ください。また、最新の法令・制度・手続等の詳細については、関係機関または専門家へ直接ご確認ください。
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