大田区の製造業者ネットワークで課題解決!
宇宙開発の革新へ挑む
ファブレススタートアップ

株式会社cosmobloom代表取締役 CEO福永桃子

株式会社cosmobloom 代表取締役 福永桃子

2023年4月に大田区・南六郷の創業支援施設「六郷BASE」で創業した宇宙スタートアップ、株式会社cosmobloom。六郷BASEの入居期間満了後、2026年3月に、JR・東急蒲田駅至近のオフィスに移転しました。同社の事業概要や直近の成果、六郷BASE退去後も変わらず大田区内を選んだ理由などを、代表取締役 CEO 福永桃子氏に伺いました。

2026年10月2日に打ち上げ!宇宙ごみをなくすデオービット装置『LEAF』

人類が宇宙で活動範囲を広げるためには、宇宙ステーションや居住モジュール、大型アンテナ、発電設備など巨大な構造物が必要です。それらの材料を宇宙に運搬する手段は、現状ではロケットのみ。割り当てられるスペースが限られ、積み込むものの重量やサイズに厳しい制約があります。

そこで注目されているのが、ケーブルや薄膜といった軽くて柔軟な部材で構成される「ゴッサマー構造」です。軽量性、展開性、収納性に優れており、小さく畳んで宇宙空間に運ぶことができることから、次世代の宇宙開発を進化させる技術として期待を集めています。cosmobloomは、このゴッサマー構造を用いた宇宙構造物に係る解析・設計・開発を担う企業です。

一方、こうした柔軟な構造物は、重力や空気の影響を強く受けるため、地上での実験や検証が難しいという課題があります。そこで真価を発揮するのが、cosmobloomの中核技術である数値解析シミュレーションツール「NEDA」です。cosmobloomではNEDAを活用した宇宙構造物の解析・設計支援のほか、宇宙太陽光発電システム(SSPS)の実現を支える膜面アンテナの開発、宇宙ごみ対策用の「デオービット装置」の開発などを事業の柱としています。

「中でも、近年大きく進展したのがデオービット装置です。当社は2026年4月にデオービット装置『LEAF』の開発を完了しました。LEAFは、82×82×30mmのコンパクトな装置で、内部に最大約3.64㎡に広がる約5μm(≒0.005mm)の超極薄ポリイミドフィルムが収められています。LEAFは人工衛星に取り付けられて宇宙へ向かい、人工衛星のミッション終了時に箱の中から膜が広がって大気抵抗を増やし、周回速度を減速させることで大気圏に突入させて人工衛星と共に消滅、宇宙ごみの発生を防ぎます。現状では、2026年10〜12月の間にスペースXのロケットで打ち上げられ(※)、実証実験を行う計画です」(※10月2日にeLEAF-01は無事打ち上がり、予定通りに運用を開始)

小型衛星向けデオービット装置「LEAF」の本体
小型衛星向けデオービット装置「LEAF(Lightweight Expandable Aerobraking Film)」(写真提供:cosmobloom)

電話1本で課題を解決する町工場の機動力。“仲間まわし”の効果を実感

LEAFの開発で協業したのが、大田区内の老舗精密金属部品メーカー・株式会社桂川精螺製作所でした。大田区内外のスタートアップ企業と既存業者等のビジネスマッチングの場として開催された「Meet New Solution OTA 2024」で面識を得たことが縁となったのです。 「出会ってからすぐに、極薄ポリイミドフィルム折り畳みと、これを収める装置の製造を委託しました。桂川さんからは度々『これは難しいな…』といった声があがることもありましたが、それでも当社が求めるはるか上のレベルでフィルムを折り畳む高精度の技術や、折りムラ低減のためにオリジナルの治具を製造していただくなどのご協力によって、装置の品質が向上。協業によって当社の負荷がかなり低減したため、他の業務に集中することができました。現在は助成金や資金調達で得た資金を元手にして桂川さんの工場アパートに入居し、さらに連携を深めています」

また、福永氏は、大田区の町工場間に根付いている“仲間まわし”の恩恵にもあずかりました。仲間まわしは、一つの企業で対応できない案件でも、旧知の企業同士が連携して開発を進めるネットワークを意味します。 「何か困り事が発生して、桂川さんで対応できない場合でも『その手の加工なら○○さんだ。ああ、その部分の切削なら○○さんだ』といった具合に、即座に対応できる業者さんを教えてくださり、その場で先方に電話して話をつけて、車でただちに相手先に向かう…といったケースも少なくありませんでした。我々は仕事上の連絡ではまずメールで打診することが常ですが、桂川さんとの協業を通じて、改めて電話の即時性、スピード感を再認識しました。そしてもちろん、ご紹介いただいた業者さんの腕は確かで、当社が求めていたクオリティと、タイトな納期をきっちりとクリアしてくださったのです。桂川さんをはじめとする区内企業の皆さまとの協業なくして、LEAFの完成はあり得なかったと言えます」

損害保険ジャパン、SOMPOリスクマネジメントとの協業発表の様子
cosmobloomは、2026年6月に損害保険ジャパン株式会社、SOMPOリスクマネジメント株式会社と協業を開始。日本の衛星事業者の運用する小型人工衛星が宇宙ごみとなるリスクに備えるソリューションを開発し、宇宙産業に取り組む企業に安全・安心を届けることを目指す(写真提供:cosmobloom)

ワンストップで課題に対処してくれる大田区は挑戦にふさわしい場所

前述どおり、cosmobloomは六郷BASE退去後の移転先にJR・東急蒲田駅至近の場所を選び、引き続き大田区内で宇宙ビジネスに取り組んでいます。変わらず大田区を選んだ理由を聞いてみました。「私の親戚がかつて区内の梅屋敷で工場を営んでいた、祖父が六郷の城南信用金庫に長年勤めていた、さらに起業前の前職で、大田区内の複数の製造工場とお付き合いがあった、といった経緯から個人的に大田区に深い縁を感じていることも理由です。しかし、それらを省いたとしてもここは魅力的な場所です。徒歩約5分の蒲田駅や徒歩圏の京急蒲田駅を使えば、羽田空港、新幹線停車駅の品川駅の2方向に直通という足回りの良さ、大田区、大田区産業振興協会のスタートアップに対する助成金支援や、適切な区内業者とのマッチング、そして良好な交通アクセスのわりには都心部よりもリーズナブルな家賃など、沢山の長所があります」

さらに、桂川精螺製作所との協業で明確になった大田区内のメーカーの実力も、ファブレスのcosmobloomにとって非常に心強いポイントだと言います。「LEAFの開発を通じて、区内製造事業者の十分な実力を確認しました。『宇宙』と聞くと、心理的敷居を感じてしまう企業さんもいらっしゃるかもしれませんが、今に至るまで存続してきた企業の高い品質や信頼は、宇宙スタートアップのニーズを満たすものです。もし宇宙産業の案件のオファーがあったとしたら、僭越ながら自信を持って取り組んでいただければと思います」最後に、大田区を創業候補地としている宇宙スタートアップに対して、こんなメッセージを送ってくれました。「大田区というビジネス環境に対する私の印象は『ここに来れば何とかなる』。既存企業のレベルの高さと強固なネットワークでワンストップに課題解決が進むのは本当に頼もしいです。また、行政のほうでも新しい挑戦を埋もらせることなく、手厚く支援してくださいます。宇宙産業をはじめとする新たな領域のスタートアップにとって、大田区は成長しやすい場所ではないでしょうか」

Women in Tech Global Awards の壇上で話す福永桃子氏
Most Disruptive Award 受賞を伝えるビジュアル
2024年11月にパリで開催されたThe 7th edition of Women in Tech® Global Awardsにて福永氏は日本人初としてのMost Disruptive Awardを受賞。(写真提供:cosmobloom)

Company Profile企業概要

会社名
株式会社cosmobloom
住所
東京都大田区蒲田五丁目2番7号 Moonshiny弐番館301号室
代表者
代表取締役 CEO 福永 桃子
設立
2023年(令和5年)4月
事業内容
膜面アンテナおよびデオービット装置の設計開発販売事業/宇宙柔軟構造物の解析・設計支援事業/宇宙柔軟構造物のコンサルティング事業/宇宙産業技術者育成事業
https://cosmo-bloom.com/